ハヤカワ・テルージ・トリオ スペシャルステージ
イベント概要
It’s TETTO series 2 ハヤカワ・テルージ・トリオ スペシャルステージ
アルゼンチンタンゴ界の巨匠、フアン・ホセ・モサリーニの薫陶を受けた期待の俊英による新世代タンゴ・ユニット。
パリの聴衆を魅了した、伝統と芸術の“コンテンポラリー・タンゴ”
バンドネオン早川純さんにコンサートの聴きどころやバンドネオンに対する想いなどをお聞きしました
―――岩手への来県は今回の公演で何度目になるでしょうか?
早川 これまでに、何回来たか覚えていないくらい岩手県に来ています。盛岡市は、タンゴの老舗ライブレストラン「アンサンブル」や、その他のライブハウスも含め幾度も演奏で伺いました。一関でも幾度かコンサートを実施しました。昨年はコンサートツアーの合間に、中尊寺金色堂や猊鼻渓を観光する時間が持てて、とても印象に残りました。この8月にも、盛岡市と紫波町でバンドネオンソロのコンサートを3公演予定しているんですよ。
―――岩手県沿岸には初めて訪れるのでしょうか?
早川 はい、沿岸部は初めての来訪となります。ピアノの久保田もベースのレオナルドも岩手は初めてということで、釜石への来訪を3人ともとても楽しみにしています。オススメの魚介、料理などあれば教えていただきたいです!
―――“バンドネオン”と言うと日本では“アルゼンチン・タンゴ”と言うイメージが強いですが、どんなジャンルの演奏で活躍している楽器でしょうか?
早川 そうですね、基本的にはアルゼンチンタンゴでの使用が、8割方かと思います。他には南米の民謡であるフォルクローレや、ジャズ、クラシック音楽で使われることもあります。日本では歌謡曲、ドラマ、映画、テレビCM、アニメ、ゲーム音楽など、様々な分野で使われることがあります。僕自身様々なレコーディングに参加してまいりました。例えば2年ほど前には、演歌歌手の石川さゆりさんの曲にも参加させていただきました。
―――早川さんにとっては“バンドネオン”とは?
早川 バンドネオンとの出会いは、「タンゴの革命家」と言われたアストル・ピアソラの音楽との出会いがきっかけでした。ピアソラの奏でるバンドネオンの音に魅せられ、自分も奏でてみたいと思ったのがバンドネオン奏者を志すきっかけとなりました。バンドネオンは、音階を奏でるボタンの配列が滅茶苦茶で、蛇腹の伸び縮みでも音が不規則に変化してしまう難解な楽器です。その音は情熱的なようでいて、キレのある冷たさ、温かな素朴さなど、奏で方によって全く違った表情を見せる不思議な楽器です。この楽器の魅力を一人でも多くの人に知って欲しいという思いで、昨年からバンドネオンソロによる全国ツアーを開始して、今年の3月にはヨーロッパ5カ所を回るツアーも行いました。バンドネオンは僕にとって、音楽活動における大切な相棒であり、自分の思いを音に乗せて伝えるための、分身でもあります。
―――トリオを組むきっかけとなったフアン・ホセ・モサリーニ氏とはどんな方?
早川 アルゼンチンタンゴの世界には、マエストロ(巨匠)と言われる演奏家が幾人か存在しますが、そんな中でも、モサリーニ氏ほどバンドネオンの持つ芸術性を体現できる演奏家はいないと思います。バンドネオン奏者としてだけでなく、音楽のジャンルを越えて一人の音楽家として、現代最高の存在の一人だと思います。
モサリーニ氏はアルゼンチン在住時、若干18歳にしてバンドネオン奏者として一位の栄冠を手にし、星の数ほどあるタンゴ楽団の最高峰、プグリエーセ楽団に在籍していました。その後軍事政権の時代に身の危険を感じヨーロッパに亡命して、ヨーロッパに本格的なアルゼンチンタンゴを紹介し、コンセルバトワール(音楽院)で教育者として広めたのです。
モサリーニ氏の音には、タンゴの歴史に脈々と受け継がれるダンディズムと、数奇な運命を経て自然と身についた悲哀が同居しています。彼の音楽に惹きつけられる形で、国籍も生い立ちも異なる我々3人が出会えたことは、本当に幸運なことでした。
―――プロフィールから、レオナルド・テルージさん、久保田美希さんも素晴らしいアーティストとお見受けしておりますが、その魅力をお教えください。
早川 レオナルドのお父さんは、フランスの現代音楽の分野で名の知られた作曲家。レオナルド自身にも、作曲家として類まれな才能が満ち溢れています。レオナルドの両親はもともとアルゼンチン人であり、彼自身はパリ生まれのフランス育ち。アルゼンチンの血とフランスのエスプリを兼ね備えた、ワールドワイドな感性を持っています。コントラバスというと普通、音楽を支える低音部を奏でる、縁の下の力持ち的なものと認識されていますが、彼のプレイは違います。彼の奏でるベースは音楽の骨子を支えるだけでなく、時に舞い上がり、羽を得たかのように高らかに歌います。彼ほど「華」のあるベーシストを僕は知りません。人間的にはとても聡明で、常にポジティブな気持ちに溢れています。僕にとって得がたい音楽的なパートナーであり、無二の親友でもあります。
久保田美希もまた、不思議な魅力をまとったピアニストです。彼女の音楽家としての素地は、日本ではなくクラシックの本場、ヨーロッパで培われたのです。モサリーニ氏の音との出会いが、彼女にとってのタンゴとの出会いでもありました。彼女にとってタンゴは、クラシック(芸術)音楽の延長線上にあるものなのです。久保田の奏でるピアノは、器用に整えられた形だけの音楽ではなく、音楽の芯の部分そのものです。飾り気のないその表現は、人の心を直接揺り動かす、不思議な凄みを持っています。とてもチャーミングふわっとした雰囲気の女性ですが、意外と芯は強く、頑固な性格かなと思います。人間性は音に出るんですね(笑)。
―――(普通の“タンゴ”に対して)“コンテンポラリー・タンゴ”の目指しているところや違いをお教えください。
早川 アルゼンチンタンゴは当初、ダンスミュージックとして始まった音楽です。現在でも、基本的には踊りと切り離されない「ポピュラー音楽」として認識されることが多いです。このトリオが目指す在りようは、タンゴの持つ芸術性や深みに焦点を当てた、「芸術音楽」としてのタンゴです。クラシックに限らず、音楽には芸術として昇華しうる可能性を秘めています。タンゴもまた然り。ヨーロッパという土壌で、モサリーニ氏という稀有な芸術家が活動した中で培われたきた新しいタンゴの伝統を意識して、現代だからこそ、そして本場アルゼンチンではないからこそ表現可能な音楽を奏でたいと考えています。ただ、難しく考えていただく必要はありません。我々の奏でる音楽は、クラシックの現代音楽のように難解なものではありません。人の心の琴線に触れる歌心に溢れています。是非、ゆったりとした気持ちで音楽に身をゆだね、耳を傾けていただければ幸いです。
―――今回プログラムの聴きどころ
早川 早川作曲の『岐阜民謡「おばば」の主題による幻想曲』は、ベースのレオナルドの第一子誕生をお祝いする気持ちで作曲しました。日本民謡とバンドネオンの音色、タンゴのリズムがどんな風に融合するのか、感じていただければ嬉しいです。また、タンゴの定番曲、「ラ・クンパルシータ」や「リベルタンゴ」なども、このトリオならではのアレンジを楽しんでいただければと思います。
レオナルドは、今回のコンサートのために4曲もオリジナル曲を書き下ろしています。世界で活躍する現代最高のタンゴ作曲家の一人である、彼の音楽にもぜひ耳を傾けてみてください。
トリオとしては4度目の日本ツアーとなります。クラシックともタンゴとも違うようでいて、両方の魅力をブレンドしたこのトリオならではの演奏を、素敵な音楽空間であるTETTOで、ぜひ味わっていただきたいです。
―――公演を楽しみにしている方々へのメッセージをお願いします
早川 今回、初めての街で我々の音楽を披露する機会がいただけて、メンバー皆とても嬉しく、楽しみにしております。「コンテンポラリー・タンゴ」と言っても馴染みがないかとは思いますが、どうか気軽にコンサートにお越しいただければ幸いです。音楽は頭で「考えて学ぶもの」ではなく、心で「感じて楽しんでいただくもの」だと思います。また、便利にテレビやパソコンで簡単に音楽に触れられる時代だからこそ、生のコンサートでしか得ることの出来ないものがあると思います。
我々の音楽に触れて、何か、新しい変化が訪れるきっかけとなれば嬉しいです。
それでは、会場でお目にかかりましょう。
―――ありがとうございました!
プログラム
G.M.ロドリゲス作曲/早川純編曲:ラ・クンパルシータ
A.ピアソラ作曲/早川純編曲:リベルタンゴ
L.テルージ作曲:プロセッション(行列)
早川純作曲:岐阜民謡「おばば」の主題による幻想曲
…ほか
※プログラムは変更になる場合がございます。
出演
HAYAKAWA TERUGGI TRIO (はやかわ てるーじ とりお)
日本人バンドネオン奏者の早川純、ピアニストの久保田美希と、アルゼンチン系フランス人ベーシストのレオナルド・テルージによるタンゴ・トリオ。それぞれのフィールドで音楽家としてのキャリアを積んできた3人が、タンゴ界の巨匠フアン・ホセ・モサリーニ氏との縁をきっかけにパリで出会い、互いの音楽性や才能に惹かれあう形で、2015年の春に結成。パリで行われた初のコンサートは、耳の肥えた聴衆を唸らせた。
3人の音楽的なルーツはクラシックにあり、その音楽の深淵さと芸術性の新たな表現の場として「タンゴ」を捉えている。早川とテルージの作・編曲によるレパートリは、タンゴ本来の情感やエネルギーを色濃く湛えながらもモダンであり、伝統的なポピュラー音楽としてのタンゴの枠を超えた、芸術音楽としてのタンゴの再評価を目指している。2017年に発表したアルバム『TANGO NOUVEAU』は、国内外で高い評価を得ており、今後の活動に更なる注目が集まっている。
アルバムリリースから2年。4度目の日本ツアーとなる今回は、新たなレパートリを携え、さらに進化した「芸術タンゴ」の世界を繰り広げる。
「彼らのような素晴らしい音楽家たちの成長に携われたことを、私はとても光栄に思う。彼らは必ずや、ブエノスアイレスの音楽“タンゴ”を、更に高い次元に押し上げてくれるだろう。」
フアン・ホセ・モサリーニ(世界最高峰のバンドネオン奏者)
【メンバープロフィール】
早川 純 (はやかわ じゅん) バンドネオン
東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。ジェヌビリエ音楽院ジャズDEMを満場一致の一位で取得。様々なスタイル・編成のユニットを主宰し、精力的に活動を続けてきたが、2013年、ドイツのクリンゲンタールで行われた国際バンドネオン・コンクールでの優勝を機に渡仏。J.J.モサリーニ氏にバンドネオンを師事した。同時にパリを拠点として、ヨーロッパ各地で演奏活動を展開。2018年より定期的に、日本人としては初となるバンドネオン・ソロツアーを開催、2019年3月にはヨーロッパ5箇所での公演も行い好評を博した。現在は日本を拠点として、演奏家・作曲家として、バンドネオン、そしてタンゴの可能性を独自のスタイルで追求している。
レオナルド・テルージ (れおなるど・てるーじ) コントラバス
現代音楽の大家であるダニエル・テルージ氏を父に持つ。パリ国立高等音楽院コントラバス科を卒業。アルゼンチンの血とフランスのエスプリを兼ね備えた彼は、その正確無比なテクニックと華のある芸術的な表現力で、ヨーロッパの音楽シーンにおいて最も注目されるベーシストの一人となっている。モサリーニ氏からは、演奏家、作曲家、アレンジャーとして、全幅の信頼を寄せられている。活動はタンゴに留まらず、イタリアの歌姫L.ガレアッティのユニット、オルケストラ・ド・コントラバス等にも参加。現在パリとバルセロナを拠点としつつも、世界中の音楽シーンに招かれ精力的に演奏活動を行っている。
久保田 美希 (くぼた みき) ピアノ
ロンドン王立音楽院、パリ・エコールノルマル音楽院にてピアノを学ぶ。2012年ブレスト国際ピアノコンクールにて一位メダルを獲得。翌年、マイエンヌ国際ピアノコンクールに出場し、聴衆の支持を受けて入賞。音に対する独自の美意識と繊細な表現で、クラシック・ピアニストとしてキャリアを積んできたが、2013年にJ.J.モサリーニ氏の演奏に出会ったことでタンゴに目覚める。その才能を認められ、2014年、2017年と、モサリーニ氏の来日公演において専属ピアニストを務めた。タンゴピアノというジャンルに、芸術的な感性を投影できる、稀有なピアニストである。
ダウンロード |
ハヤカワ・テルージ・トリオ チラシ(pdf/1MB) |
開催日 |
2019年9月21日(土) |
開場時間 |
13:30 |
開演時間 |
14:00 |
終演時間 |
16:00予定 |
会場 |
釜石市民ホールTETTO ホールA |
料金 |
公演は終了いたしました 全席自由 一般2,000円(友の会1,600円)/高校生以下500円(友の会400円) 当日各500円増 注)未就学児のお子様のご入場・ご同伴はご遠慮ください。 【友の会以外の割引】 まとめ買い割引:10枚以上同時購入で20% off シルバー割引:65歳以上証明書提示で一般チケット1枚が20% off 友の会チケット・まとめ買い割引・シルバー割引は釜石市民ホールのみ取り扱い |
プレイガイド |
【釜石】釜石市民ホール、東山堂釜石事業センター、イオンスーパーセンター釜石【大槌】シーサイドタウンマスト【宮古】宮古市民文化会館【遠野】とぴあ【大船渡】サン・リア、リアスホール【盛岡】岩手県民会館、カワトク 【オンラインチケットサービス】 |
お問い合わせ |
釜石市民ホールTETTO 0193-22-2266 info@tetto-kamaishi.jp |
備考 |
当ホールには専用駐車場がございません。車でご来場の際は、市営大町駐車場など近隣の有料駐車場をご利用くださいますようお願いいたします。 【大町駐車場割引券サービス】 公演当日、ホール総合案内に公演チケットと大町駐車場駐車券を提示いただくと、駐車1時間サービス券2枚を進呈いたします。ぜひご利用ください。 |
主催等 |
【主催】釜石市民ホール 【共催】釜石市 【後援】岩手日報社、釜石新聞社 【協力】NPO法人LOCO企画 |